医療介護の岩盤規制をぶっとばせ!
-コロナ渦中の規制改革推進会議、
2年間の記録-
目 次
はじめに …………………………………………………………………… 3
第1章 新型コロナと医療提供体制
1.新型コロナ論争 ……………………………………………………… 4
2.第三波で病床逼迫のワケ …………………………………………… 6
3.新型コロナと医療計画の見直し …………………………………… 13
4.新型コロナと地域医療連携トピックス ………………………………… 18
5.新型コロナとワクチン後進国日本 ………………………………… 23
コラム① 総合診療医とコロナ ………………………………………… 30
第2章 規制改革会議と医療DX
1.規制改革会議の年譜と医療制度改革 …………………………………
31
2.新型コロナとオンライン診療 ……………………………………………35
3.デジタル完結3点セット
~オンライン診療、電子処方箋、オンライン服薬指導~ …………… 40
4.プログラム医療機器(SaMD)ラグ …………………………………… 45
5.リアルワールド・データの民間利活用 …………………………………49
6.支払基金改革 …………………………………………………………56
コラム② 平成の社会保障~ある厚生官僚の証言~ ………………… 62
第3章 規制改革会議と科学的介護
1.科学的介護データベース …………………………………………… 63
2.科学的介護の本質はリアルワールド・エビデンス ………………… 67
3.介護サービスの効率化 ……………………………………………… 68
4.介護施設における医療的ケア ……………………………………… 72
5.社会福祉連携推進法人 ……………………………………………… 76
コラム③ 高齢者在宅医療・介護とエビデンス ……………………………82
第4章 規制改革会議と医薬品・医療機器
1.一般用医薬品のコンビニ販売、ネット通販 ………………………… 83
2.スイッチOTC ………………………………………………………… 88
3.敷地内薬局 ………………………………………………………… 92
4.単回使用医療機器の再製造 ………………………………………… 98
コラム④ 調剤業務の外部委託 ………………………………………… 97
第5章 2025 年問題への改革トピックス
1.紹介状のない患者の保険外し ……………………………………… 103
2.後期高齢者自己負担2割 …………………………………………… 108
3.ジェネリック医薬品の闇とポスト80%時代 …………………………… 113
4.バイオシミラー ……………………………………………………… 115
コラム⑤ ジェネリック医薬品とインドネシア …………………………… 122
は じ め に
2019 年10 月から著者は、内閣府の規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググル
ープ(座長:大石佳能子・メディヴァ社長)の専門委員を務めている。新型コロナ感染拡大
の波の中、2020 年から会議はオンライン会議に置き換わったが、月2 回ペースで行われ
る会議には河野太郎規制改革担当大臣も出席して、その内容は熱い。毎回、医療介護の
制度改革の最前線といった趣だ。議論は関連の業界団体からの要望と、それに応える担
当省庁の回答に対して委員が質疑応答を繰り返す。そして課題解決へ向けて具体的な方
向性やその実施期限を決めて、課題の進捗フォローアップも行うという形式で進む。
規制改革会議の源流は、40 年前の1983 年の中曽根内閣時代の臨時行政改革推進
審議会(会長:土光敏夫・経団連名誉会長)の下に設置された規制緩和分科会に始まる。
あのメザシの土光さんからスタートしたのだ。この規制改革会議の背景には、「小さな政府」
や「民営化」を目指し、大幅な規制緩和、市場原理主義を掲げる「新自由主義」の経済思想
が流れている。
こうして発足した規制改革会議は、1980 年代には「経済的規制」を中心に議論がなさ
れていた。しかし、1990 年代からは「社会的規制」も扱うようになった。その中で官製市場
の典型である医療分野については、2001 年の総合規制改革会議の第一次答申が1つの
エポックとなった。
その第一次答申の成果を振り返ると、レセプト電子化とレセプトのオンライン請求などの
医療のIT 化に大きく貢献したもの、混合診療のように既存の枠組みからは脱せなかった
が、改善が図られたもの、株式会社立病院のように全く実現をみなかったもの、一般用医
薬品のコンビニエンスストアでの販売にみられるように医薬品の定義を大きく変えたものな
どさまざまである。成果はさまざまだが、規制改革会議なしで、これらの改革が各省庁の中
だけで単独で成しえたかと言えば、それは疑問だ。各省庁と関連業界団体だけではでき
ないことを行うのが規制改革会議に与えられた役割である。
本書では、こうした規制改革40 年の歴史の流れを踏まえながら、現在の規制改革推進
会議の医療・介護ワーキンググループの2年間の足跡を追うことにした。テーマはオンライ
ン診療、科学的介護、介護サービスの効率化、スイッチOTC、再製造単回使用医療機器
など最新の課題を取り上げた。
また、新型コロナにより逼迫した病床問題と、2025 年へ向けての改革トピックスについ
ても合わせて取り上げた。
本書が医療介護制度とその「制度改革」に関心をお持ちの関係諸氏のお役に少しでも
立つことができれば幸いです。
2021 年5月 横浜港南台で
武藤 正樹